一方でルイは、アマが暴力を振るった暴力団員が死んだというニュース目にした。アマが捕まってしまうことを危惧したルイは、アマの髪をアッシュに染め、刺青が見えないように長袖を着るよういいつける。その事実を全く知らないアマは何の疑いもなくルイに従った。 『芥川賞の選評では、細部描写の秀逸さと、派手な道具立ての裏にある物語の純粋さが評価された。選考委員のなお、単行本化にあたり結末部分が改訂されているが、その点についてルイはアマのスプリット・タンに惹かれ、シバさんの指導の下、自分の舌にもピアスを入れる。さらにシバさんに、背中に生きている実感もなく、あてもなく渋谷をふらつく19歳のルイ。ある日の訪れたクラブで赤毛のモヒカン、眉と唇にピアス、背中に龍の刺青、蛇のようなスプリット・タンを持つ「アマ」と出会い人生が一変する。アマの刺青とスプリット・タンに興味を持ったルイは、シバと呼ばれる男が施術を行なっている怪しげな店を訪ね、舌にピアスを開けた。その時感じた痛み、ピアスを拡張していく過程に恍惚を感じるルイは次第に人体改造へとのめり込んでいくことになる。「女の方が痛みに強い」「粘膜に穴を開けると失神する奴がいる」という店長のシバも全身に刺青、顔中にピアスという特異な風貌の彫り師で、自らを他人が苦しむ顔に興奮するサディストだと語った。舌にピアスを開けて数日後、ルイとルイの友人は夜道で暴力団風の男に絡まれる。それに激昂したアマは相手の男に激しく暴力を振るい、男から二本の歯を奪い取って「愛の証」だと言ってルイに手渡す。アマやシバと出会う中でルイは自身にも刺青を刻みたいという思いが強くなり、シバに依頼して背中一面に龍と麒麟の絡み合うデザインの刺青を彫ることを決めた。画竜点睛の諺に従って、「キリンと龍が飛んでいかないように」という願いを込め、ルイはシバに二匹の瞳を入れないでおいて欲しいと頼む。刺青の代償としてシバはルイに体を求め、二人は刺青を入れていくたびに体を重ねるようになる。 そんな中、警察からシバの店に「龍の刺青をした、赤毛の客を教えて欲しい」という連絡が入った。ルイはしらを切り通すが、不安に襲われながら日々を過ごすことになる。ある夜、アマは突然行方不明になり、ルイは呆然とする。警察に捜索願を届けようとするも、ルイはアマの本名すら知らなかったのだ。数日後、行方不明となっていたアマの無残な死体が発見されたと警察から告げられたルイ。アマの遺体には無数のタバコを押し当てた痕があり、陰部にはエクスタシーというお香が差し込まれていた。警察官から「アマはバイセクシャルだったか」と尋ねられ、アマが何者かによってレイプされていたことを察するルイ。アマを殺した犯人が見つからないことを激しく糾弾する。 蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。第27回すばる文学賞、第130回芥川賞をダブル受賞した衝撃的なデビュー作。蛇にピアス(金原ひとみ)の作品情報 タイトル 蛇にピアス 著者 金 ルイが開けた舌ピアスは徐々に拡張していた。ピアスの穴を広げていく中、シバは無理にピアスホールを広げると炎症を起こすと忠告する。その忠告をよそにルイはさらにピアス穴の拡張を続けた。刺青の完成と同時にルイは自らの生きる意味を見失い、アルコールに依存。自分が生きていることを実感できるのが痛みを感じている間だけだと気づいたルイは、アマとシバ、どちらが自分を殺すのだろうかと想像を巡らせるようになる。 『蛇にピアス』(へびにピアス)は、日本の小説家・金原ひとみの小説であり、当人のデビュー作である。第27回すばる文学賞を受賞した。 綿矢りさの『蹴りたい背中』とともに、第130回芥川龍之介賞を受賞した。. ルイはアマにもらった二本の歯を砕いて飲み込むことによって、アマの愛の証を体に吸収したことを実感する。そしてシバに麒麟と龍の瞳を彫り込んでもらうように頼み、シバはそれに従った。ルイは舌のピアスを拡張するのをやめる。スプリットタンは完成せず、ただ舌には大きな穴が残り、ルイは一人、ピアスと刺青が自分にとってどのようなものだったのか、その答えを知るのだった。 2008年 9月20日、作者本人の意向を受けて蜷川幸雄監督による映画が公開された。 Amazonで金原 ひとみの蛇にピアス。アマゾンならポイント還元本が多数。金原 ひとみ作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また蛇にピアスもアマゾン配送商品なら通常配送無料。 蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。第27回すばる文学賞、第130回芥川賞をダブル受賞した衝撃的なデビュー作。ルイはアマのスプリット・タンに惹かれ、シバさんの指導の下、自分の舌にもピアスを入れる。さらにシバさんに、背中に麒麟と龍の刺青を入れてもらう約束も取り付ける。しかし、アマと喧嘩した暴力団風の男の死亡記事を見てから、ルイに不安が襲い始める。小説家。東京都出身。文化学院高等課程中退。不登校の経験があり、12歳にして小説を書き始める。20歳の時に周囲の勧めを受けて応募した「蛇にピアス」で、第27回すばる文学賞を受賞。2004年には、同作で第130回芥川賞を受賞し大きな話題となる。『蛇にピアス』集英社、2004年1月『蛇にピアス』2008年9月20日蛇にピアスを全編無料視聴できる動画配信サービスの一覧です。渡辺ペコ『蛇にピアス』集英社、2004年12月2004年にデビューした渡辺ペコの初単行本化作品。作者本人が語っているように、作画に荒さはあるが、文学的な雰囲気が良く出た作品に仕上がっている。単なるコミカライズではなく、再構築したともいえる作品。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。舌にピアスを刺し、龍の刺青を入れたパンク男、アマと知り合ったルイ。アマの二股の舌に興味を抱いたルイは、シバという男の店で、躊躇なく自分の舌にもピアスを入れる。それを期に、何かに押されるかのように身体改造へとのめり込む、そんな物語です。すばる文学賞に応募され、そのまま芥川賞を受賞した著者のデビュー作です。本作では、徐々に舌を裂いていくスプリットタン、背中一面に施される刺青、SM的なセックスシーン、そんなものが描かれています。ある意味現代的といえるようなその描写にばかり目が向いてしまいますが、筆者が見てほしいのはそこだけではないと思いました。特徴的なのは、主人公のルイが世界を冷ややかな目で見ているということです。冷めているというか、どうなってもいいというような現代の若者に共通している点をルイも兼ね備えています。アマはメンタルが不安定な一面を持っています。怒ると死ぬまで人を殴り続け相手の歯を折って持ってきます。かと思えば、バイトが忙しいルイの帰宅が30分遅れるだけで寂しがって電話をしてきたりします。冷静な彼女もアマがいなくなると、人が変わったように慌てだすのです。その差があまりにも大きいんです。アマが死んだ後、ルイの体重は34キロまで落ちてしまいます。命にかかわりそうな痩せ方です。アマの死体を見たからなのか、ショックからなのかはわかりませんが、それまでただの冷めた登場人物でしかなかったルイが、急に生き生きとし始めるのです。体重が激減し、病的ともいえるその状態のほうが、生きているという実感にあふれているのです。そのルイの姿を見ると、舌にピアスをさしていたのは、痛みで「生」を確かめようとしていたのではないかということに思い至ります。本作は芥川賞にふさわしくないという声がよく聞かれます。徐々に舌を裂いていくスプリットタン、背中一面に施される刺青、SM的なセックスシーン…そのような過激な描写に苦手意識が生まれることもあるでしょう。しかし、それらの描写は作品の一要素でしかありません。「きっと、私の未来にも、刺青にも、スプリットタンにも、意味なんてない。」過激な行為を行う彼らの背後にどんな気持ちが潜んでいるのか。そんなところにも視線を向けてみるのもいいと思います。平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。

アマの死後、生きる気力を完全に失っていたルイのことを受け入れたのはシバだった。シバの家に暮らすようになり日々を送る中で、ルイはアマの陰部に差し込まれているお香がシバの家に置いてあること、そしてアマの体に押し当てられたタバコが、シバが吸っている銘柄と同じであることに気がつく。