INDEX居酒屋といっても、実に色々なタイプがあります。 一般的には「気軽に入れて、肴をつまみながらお酒が楽しめる和風の飲み屋」というイメージがある居酒屋ですが、他と差別化された繁盛店を目指すのでしたら、そういったイメージとは異なったお店にするのも手です。 NHKのBSで『入りにくい居酒屋』というユニークな番組が放送されているのをご存じでしょうか。世界の各都市で、入りにくさNo.1の居酒屋を紹介するという少しあやしい内容ですが、実際には地元の人たちにとても愛されている(それゆえ観光客は入りにくい)繁盛店です。そこで紹介される店は、たいていその土地でとれる食材や酒(地酒や地ビール、地ワイン)を大切にしていて、料理法などにも郷土色を強く持っているという特徴があります。 新しいお店を開くのにあたって、最初からそういった居酒屋を作ることは難しいと思いますが、他にはない特徴を打ち出すことはとても重要です。同時に、居酒屋と言っても和風にこだわる必要はないと思います。イタリアンやスペイン風、フレンチや英国風などがあっても良いと思いますし、もちろんアジア風やエスニック居酒屋というのもありだと思います。 少し変わったところでは、ネパール人のオーナーが経営するカレー料理主体の居酒屋というのが実際にあります。数種類の本格的なカレーが楽しめるのはもちろんですが、枝豆や冷奴、焼き鳥といったメニューもあり、日本酒やサワー類などのドリンクも普通に供され、内装もいたってシンプルでどこにでもある居酒屋といった感じです。昼はカレー・ランチ、夜は気軽に入れてカレーも食べられる居酒屋ということで、近所の会社員から重宝されています。 このように、“居酒屋”という既成概念にとらわれず、柔らか頭で「どんな居酒屋にするのか」を考えてみることからスタートしてみるのも良いと思います。イギリスで居酒屋と言えば、やはり“パブ(Pub)”。日本でも知られるようになってきたスペインの“バル”やイタリアの“バール”(これらも広い意味では居酒屋といえます)に近い業態ですが、スタンド中心のバー的な店からゆっくり座って料理を楽しめる店(地方に多い)まで様々なタイプがあるようです。一方、イタリアでは“オステリア”、フランスでは“ビストロ”や“ブラスリー”といった、もう少し料理に重点を置いた形態のお店もあります。ドイツでは、“クナイプ”と呼ばれるビールと料理を楽しめる店が、日本の居酒屋にあたります。 以前の江戸川橋駅から徒歩1分、目白通りからひとつ路地に入ったところにオープンしたチェーン店の大衆居酒屋。近所には小さな工場や会社とともに住宅も多いため、ターゲットに「女性」や「家族連れ」も加え、その人たちが入りやすい店づくりをめざしました。入口は全開口にすることで、店内が見渡しやすいような作りとし、明るい雰囲気になるような照明を採用。また、昔ながらの居酒屋の雰囲気を感じさせるカウンターとともにBOX席も設置し、子連れの家族でも気軽に使えるような工夫をしてあります。このように、チェーン店でも出店する場所によってターゲットが変わることはあるため、その場所とターゲットにふさわしい内装にすることが大切になるのです。 <ターゲットの設定とともに、やはり店としての「こだわり」は何なのかを考えて決める必要があります。 食材や料理(調理法)にこだわった居酒屋、酒にこだわった居酒屋、国や郷土色にこだわった居酒屋などなど…いろいろな「こだわり」があると思いますが、同時にそこに欠けてならないのは、他にない「特色」を持たせるということです。すぐ近所に魚料理を売りにした居酒屋があるのに、自分も魚貝の目利きには自信があると言って、同じような居酒屋を出してはお客さんの取り合いになるだけです。それよりも、例えば[九州の魚にとことんこだわった居酒屋]にした方が、特色が明確になり、他店との差別化を図ることができるというものです。 その一方で、「こだわり」や「他にない特色」だけを追求しすぎるあまり、材料費などにかかる原価計算を度外視してしまい、その結果、赤字が続いて経営が立ち行かなくなる…などということがないようにしなければなりません。同じように、店側の「こだわり」が強すぎて、味やテイストを理解してくれないお客さんを排除するようなことも当然避けなければなりません。 何にこだわるのかを決めたら、再びターゲットについて考え、[稼働率]や[客単価]を想定して「店として成り立つのかどうか」を見極める。そして、最初の「こだわり」を実現可能なカタチに修正していく…。その繰り返しが、他にない「特色」を持った繁盛店づくりにつながっていくのです。 西荻窪にある牛串と牛鍋にこだわった居酒屋。牛肉料理という、ともすると敷居が高く感じられそうなイメージを払拭すべく、オーナーさんからは「大衆的な酒場のような雰囲気を」というご要望を最初にいただきました。そのご要望を取り入れながら、少しだけアダルトな雰囲気も出せるようにデザインしました。特にこだわった点は、内装を塗装仕上げにしたことと、厨房との間仕切りカウンター上を黒板塗装で仕上げたことです。この黒板にその日のおすすめメニューなどを描いてもらうことで、賑やかさが演出できます。その一方、天井はワインレッドに仕上げ、テーブル間の仕切りにはブロックコンクリートを使うなど、大衆的な空間にアダルトな雰囲気をプラスしています。 <さて、いよいよ内装のプランに入ります。まずは、自身の「こだわり」を店の中でどうやって表現したらよいか考えてみましょう。例えば、カウンターがメインで日本酒の品揃えが自慢の店にしたいならば、カウンターの後に冷ケースをドーンと並べて、お客さんの好みの日本酒を取り出して飲ませる…、また、様々な豚の部位を食べることができる焼トン中心の店をつくりたいのならば、豚1頭の部位を描いたイラストを壁面に大きく掲げる…などといったアイデアを出すことです。 そういったアイデアがある程度出たら、つぎにデザイナーにアイデアを伝え、同時にもっと抽象的なイメージ―例えば、レトロモダンな雰囲気にしたい、暖かみのある明るい店にしたい、漁場の番小屋をイメージした店にしたいなど―があるようでしたらそれも伝えます。 また、「いくつかアイデアはあるのだけれど、どうしたらよいかわからない」という場合には、とにかく一度その全てをデザイナーにぶつけてみるのも良いと思います。デザインをする側としては、それらのアイデアを話し合いながら吟味していく方が進めやすいですし、少し時間はかかっても、そういったやり取りによって心から納得できる内装デザインが完成する場合が多いからです。 門前仲町にできた“祭”をコンセプトにした居酒屋。賑やかな街にふさわしい「大衆の祭」をイメージした居酒屋にしたい、とのオーナーさんの意向を受けて2階もある店舗の改修工事を行いました。 入口から店内の随所に「祭提灯」を掲げ、まずは賑やかさを演出。外のコーナー(角)には、おすすめ料理名を入れた大型提灯も掲げ、注目度を高めています。同時に店内外の装飾小物として、日本酒の一升瓶を多数展示し、カラフルなラベルをアクセントに利用しています。また、階段部分の大きな壁面には、地方の祭を参考にしたオリジナルの楽しいイラスト画を設置。祭の高揚するムードを作りだしています。 <まずは、入口です。これは、はじめて来店したお客さんになったつもりで考えてみてください。 店の前に立った時、またはドアを開けた時に、「賑やかさ」がある居酒屋は「入ってみようかな」という気にさせるものです。「静かなカフェ」はあっても「静かな居酒屋」にはあまり入りたいとは思わないように、開店直後のまだお客さんが少ない状態でも、なんらかの「賑やかさ」を感じさせることが居酒屋内装の重要なポイントとなります。古くから続く繁盛店には、壁一面にメニューの張り紙がしてある居酒屋が多いですが、それも「賑やかさ」演出の要素。はじめてのお客さんは、そのメニューと客層、そして「賑やかさ」を見て入店を決意するのです。 路面店か地下や2階以上の店かで、入口(エントランス部分)は変わってきます。路面店は入口から店内の様子が見せやすいため、「賑やかさ」を感じさせることは容易なのですが、そうでない店舗は工夫が必要です。外にメニューや店内を貼った看板を置く、階段の途中に「こだわり」について記すなど、まずは見た目の「賑やかさ」を表現しながら、できれば映像や音でも演出を加えたいものです。「映像なんて無理!」と思う方もいるかもしれませんが、スーパーなどで良くみる小型モニター(スピーカー内臓)を使ってみるのはどうでしょうか。繰り返しの映像を流すだけなら、機械も意外に安価ですし、映像自体はスマホで撮って編集すればよいのですから。 次は、厨房です。居酒屋の厨房は、「利益はそこから生まれる」と言っても良いほど重要な場所です。 厨房を考える場合、まず重視すべきは効率です。そのためには、仕入れ(食材ストック)から料理や酒を提供するまで、そして洗い場と、全体の「流れ」を考えて設計する必要があります。 限られたスペースの中でもスムースな「流れ」を作りだすことで、お客さんを待たせずに料理や酒を提供することができますし、スタッフの動きも効率化できることで、人件費の削減にもつながっていくのです。 最後に客席です。先に[稼働率]と[客単価]の話をしましたが、店のレイアウトを考える時には、それに[客席数]が絡んできます。 料理や素材にこだわって[客単価]をある程度の高めに設定する場合、「ゆっくり楽しんでもらう」ために広めのテーブルやイスを設置することになりますので、[客席数]と[稼働率]は抑えなければなりませんし、逆に[客席数]や[稼働率]を高めたい(多くしたい)ということなら、[客単価]は低めに設定する必要があります。[客席数][稼働率]と[客単価]は反比例するのです。 もう一つ、客席レイアウトを考える際には、お客さんやスタッフの導線を考慮します。 お客さんの動きとスタッフの動きがバッティングしないようにすることはもちろん、スタッフが効率的な動き方ができるよう工夫します。テーブルやイスなどの配置や大きさは、[客席数]や[客単価]とともに導線を考えて決めることも大切です。 このように、店舗レイアウトは売上や利益にも直結してきますので、デザイナーとよく相談し、適切なアドバイスを受けながら決めていってください。 三田の国道15号線芝4丁目交差点付近にできた琉球居酒屋。現場のマネージャーさんからの第一声は「ビックリする様な店舗にしたい!」というリクエストでした。これは、沖縄らしさを打ち出しながら「入った時のインパクト」が欲しいということで、そのご要望に応えるため、沖縄の今昔を表現したイラストを使った色鮮やかな照明をあつらえ、カウンター席やテーブル席の上部には琉球瓦を配して、沖縄の雰囲気に浸りながらゆったりと過ごすことができる空間作りを行いました。同時に、広さを生かして立食のパーティや宴会なども対応したいとのご要望に応えるため、テーブルなどを動かしやすくするなどの提案をさせていただきました。。 < 当社が一番大切にしている事は「イメージの共有」です。 それはお客様と弊社との間では、もちろんですが社内間でも営業、デザイナー、施工スタッフの間でも大事にしている部分です。どこかひとつでもイメージの共有が出来ていなければ良い店舗づくりは不可能と考えています。オーナー様がイメージしていた夢が形になりその店舗を利用するお客様が笑顔でいられる場所は人と人の想いで繋がり快適なスペースとなり自然と人の集まる場所になると考えています。心地よさ、高揚感などを感じられる店舗づくりは永く愛される店舗になり繁盛店になります。●お名前●電話番号●メールアドレス●エリア●ご相談内容記入欄